- 掲載日2022年4月17日
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2022年4月1日、吉村の『破船』が「超発掘本!」に選ばれました。
閉鎖的な寒村を襲った疫病の顛末を描いたこの作品は、新型コロナウィルスと向き合う現在と重なり、今こそ読みたい一冊です。
日本ではまだ映像化されていませんが、2020年にフランスで「破船」を原作とした映画「Fires in the Dark」(監督Dominique Lienhard、原題「Naufrages」)が公開され、数々の国際映画祭で作品賞や監督賞などを受賞しました。
本屋大賞『発掘部門』「超発掘本!」とは
ジャンルを問わず、2020年11月30日以前に刊行された作品のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと思う本をエントリー書店員が一人1冊選び、さらにその中から、これは!と共感した1冊を実行委員会が選出し「超発掘本!」として発表したものです。
『破船』(昭和60年 新潮文庫)の作品紹介
小説の舞台は日本海沿岸の閉鎖的な漁村。荒天の暗夜の海で難儀する船を、村人たちが巧みに磯に誘って座礁させ、船乗員を殺して、積荷や船の建材を奪い取る。それは、極貧の村で生き抜くための、秘密の風習であり、村人は難破船を「お船様」と呼んだ。村に大きな恵みを与える「お船様」の訪れを待ち焦がれる村人たち。そして、二冬続いて「お船様」が現れたことで、村人たちから歓声が沸き上がる。しかし、「お船様」が運んできたものは、痘瘡に侵され息絶えた者たちの骸だった。やがて、村には高熱にあえぐ者たちがあらわれ始める。
執筆背景
『破船』は、日本海沿岸に残る江戸初期の古記録などを基に執筆された虚構作品です。吉村は、破船させて積荷を奪うという風習と、疱瘡(天然痘)に罹った者を船に乗せて海に流したという記録を眼にして構想を固め、新潟県佐ヶ渡島を背景地に据えて執筆しました。
昭和55年(1980)7月から翌年12月まで「ちくま」に「海流」というタイトルで連載。昭和57年の単行本化(筑摩書房)に際し、加筆して『破船』と改題しました。平成8年(1996)にアメリカで英訳翻訳出版され、その後、オランダ語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポーランド語、ヘブライ語、ポルトガル語などに翻訳されました。吉村作品で最も多くの言語に翻訳された作品です。