会期

令和4年2月18日(金)から3月16日(水)まで

概要

生前最後に発表した短篇「山茶花」は、介護に疲れ、病身の夫を絞殺した74歳の妻と、出所後の彼女の保護観察を担当する保護司を描いた作品です。
平成17年、吉村は舌癌の治療のため入退院を繰り返しながらも、取材で仙台へ向かい保護司に会い、東京地裁に足を運んでいました。
遺作短篇集『死顔』には、「山茶花」の他に自らの死生観を凝縮して表現した「死顔」、次兄の死を題材にした「二人」、山奥の温泉宿で養生生活を送った際の出来事を描いた「ひとすじの煙」、未発表作「クレイスロック号遭難」が収められています。
津村節子の「遺作についてー後書きに代えて」からは、自らの死を自覚して延命治療を拒んだ、小説家吉村昭の覚悟が伝わってきます。
「―死はこんなにあっさり訪れてくるものなのか。急速に死が近づいてくるのがよくわかる。ありがたいことだ。但し書斎に残してきた短篇「死顔」に加筆しないのが気がかり―」   
死の半月ほど前の日記にはこう記されていたといいます。