
津村節子氏寄託資料
会期
令和6年5月17日(金)から11月20日(水)
概要
静岡県の熱海・三島間を結ぶ、東海道線の丹那トンネル(旧丹那トンネル)は、今年、昭和9年(1934)の開通から90年を迎えます。両親の出身地で、吉村家の菩提寺があることから、吉村は幼少期より静岡を訪れていました。
墓参りの帰途、普通電車の中から慰霊碑を目にしたことをきっかけに、難工事と呼ばれたトンネル工事を描くことを決めます。この作品は、「闇を裂く道」として、昭和61年4月1日から「静岡新聞」で連載され、翌年に上下巻の単行本が刊行されました。
大正7年(1918)に始まった工事には、16年の歳月が費やされ、丹那断層と交差する堀削工事では、大量の湧水と土砂の噴出、昭和5年の北伊豆地震発生時を含む度重なる大崩壊などで、67人が犠牲となりました。また湧水を排出して進められた工事により、丹那盆地の水枯れが引き起こされ、それまで豊かだった稲作やワサビ栽培などの農業が大打撃を被り、近隣住民との深刻な軋轢を生みました。
吉村は、散逸した工事記録を発掘し、調査を重ね、当時を知る関係者に取材を行いました。時代の変化と、災害に直面しながらも、自然と向き合い、完成を目指した人びとの姿と難工事の実態を克明に描き出しています。