吉村昭著作のうち、出版社より刊行されたものを全集・選集類を除き、刊行年代順に紹介します。またこれらの著作は文学館エントランスでも展示しています。(展示 131タイトル、139冊)
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青い骨 昭和33年 小壺天書房
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自費出版した最初の刊行本。「青い骨」「さよと僕たち」をはじめ、結核闘病や肋骨切除手術の実体験にもとづく生と死を描いた7つの短篇を収録。 |
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少女架刑 昭和38年 南北社
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死者である少女の視点で描いた表題作ほか、学習院の先輩である三島が評価した「死体」、芥川賞候補になった「鉄橋」 など全7篇。 |
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孤独な噴水 昭和39年 講談社
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出版社からの依頼を受けて、ボクサーを主人公に書き下ろした初の長篇。執筆にあたり京成線の新三河島駅界隈を改めて歩いて回り、主人公の住む町に設定した。 |
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星への旅 昭和41年 筑摩書房
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平穏な日常の倦怠から死に惹かれて旅をする若者たちが、断崖から身を投げる顛末を三陸海岸の状況の中に綴った。表題作のほかに「石の微笑」「鷺」「煉瓦塀」「少女架刑」を収録。 |
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戦艦武蔵 昭和41年 新潮社
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昭和13年に三菱重工長崎造船所で起工された戦艦「武蔵」は、厳重な機密保持のもと、4年余の歳月をかけて建造された。その過程を中心に、建艦計画から沈没までを描いた作品。 |
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水の葬列 昭和42年 筑摩書房
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妻を殴殺した過去に追われるように、山奥のダム工事現場に行き着いて働く男と、水没を目前にした落人集落の人びとを描いた表題作ほか、戦中戦後の自身の体験を結晶化させた6つの短篇を収録。 |
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高熱隧道 昭和42年 新潮社
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黒部川第三発電所建設工事の入念な取材を行い、険しい自然環境の中で、高熱地帯にトンネルを掘鑿する難工事に挑んだ人びとの姿を活写した。 |
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殉国(後改題『陸軍二等兵 比嘉真一』ほか) 昭和42年 筑摩書房
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太平洋戦争末期の沖縄戦を題材にした作品。吉村は中学3年生の隊員を主人公に据えながら、取材で出会った多くの人びとの体験談を主人公の行動に凝縮させて描いた。 |
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零式戦闘機 昭和43年 新潮社
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零式戦闘機(ゼロ戦)の誕生から末路までを描いた作品。戦闘機を製造していた工場では、大震災とその後反復された空襲によって多くの工員や勤労学徒が惨死しており、その死にも焦点を当てた。 |
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海の奇蹟 昭和43年 文藝春秋
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女性の水死体発見にまつわる、ある漁村の異常な体験を描いた表題作ほか、「白い道」「野犬狩り」等全5篇。 |
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大本営が震えた日 昭和43年 新潮社
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昭和16年12月1日、開戦命令を伝える機密文書を乗せた旅客機「上海号」が中国軍領有地に墜落した。大本営を震撼させた事件の裏側と戦争がどのような経過で計画され、実行に移されたのか、その全貌を描く。 |
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彩られた日々 昭和44年 筑摩書房
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勤労動員に従事する青年が経験した戦時下の日々を描いた表題作ほか、「背中の鉄道」「キトク」「母」等全8篇。 |
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神々の沈黙(後改題『神々の沈黙 心臓移植を追って』) 昭和44年 朝日新聞社
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心臓移植手術の歴史を追いながら、外科医や患者など手術にまつわる人間の姿を浮き彫りにした長篇。吉村は、札幌、南アフリカ、ニューヨークなどで取材と調査を重ねて執筆した。 |
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陸奥爆沈 昭和45年 新潮社
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昭和18年(1943年)6月8日、桂島に停泊中の戦艦「陸奥」が大爆発を起こして沈没。謎に包まれたままの原因を、吉村自身が解き明かす過程を描いた。 |
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海の壁(後改題『三陸海岸大津波』) 昭和45年 中公新書
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明治29年、昭和8年、昭和35年に三陸沿岸を襲った津波の実態を記した作品。津波の体験者の回想を求めて三陸沿岸を歩き回り、津波に関する資料を収集し、調査して執筆した。 |
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戦艦武蔵ノート(後改題『戦艦武蔵ノート(作家のノートⅠ)』) 昭和45年 図書出版社
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執筆を決意するまでの心の揺れ、書くと決めてからの丹念な取材と調査など、小説「戦艦武蔵」の成立過程を綴った長篇作品。取材対象者は延べ80人に及んだ。 |
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空白の戦記 昭和45年 新潮社
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太平洋戦争とその準備期間を背景にした6つの短篇を収録。戦争の陰の部分に生きた人間を描いた。 |
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細菌(後改題『蚤と爆弾』) 昭和45年 講談社
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世界に類のない陶器製細菌蚤爆弾の開発に隠された真実と、それを開発したエリート軍医の人物像に迫った作品。研究所で行われていた捕虜を使った人体実験の実態を、資料調査と関係者の証言を得て描き出した。 |
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羆 昭和46年 新潮社
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若妻を殺した羆を追う中年猟師の執念と矜持を描く表題作ほか「蘭鋳」「軍鶏」「鳩」「ハタハタ」等生き物と人間とのかかわりを探る5篇。 |
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密会 昭和46年 講談社
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予期せぬ殺人事件に遭遇で、変化する危うい男女の関係を主軸に、心の奥に潜む欲望や執着が露呈する過程を浮き彫りにした表題作ほか全9篇。 |
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消えた鼓動 昭和46年 筑摩書房
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『神々の沈黙』の創作ノートとも言うべき作品。札幌医科大学で行われた日本初の心臓移植手術の全貌を記した。 |
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日本医家伝 昭和46年 講談社
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笠原良策、中川五郎治、前野良沢、楠本イネ、高木兼寛など近代医学の礎を築いた12人の医家、それぞれの生き方を描く短篇集。 |
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逃亡 昭和46年 文藝春秋
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霞ヶ浦航空隊の整備兵が米軍のスパイだった日本人にそそのかされて軍用機を炎上させ、脱走。国内に潜伏して生き延びる物語。吉村は元整備兵に取材してその一部始終を描いた。 |
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鉄橋 昭和46年 読売新聞社
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作家ヘミングウェイから刺激を受け、プロボクサーを主人公にした作品で、彼の謎の死について追究した芥川賞候補作ほか全6作品。 |
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めっちゃ医者伝(後改題『雪の花』) 昭和46年 新潮少年文庫
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福井藩の町医笠原良策は、私財を投げ打ち、種痘の苗を福井に持ち込んだ。人々を救うため、種痘の普及に尽力した良策を描く歴史小説。 |
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背中の勲章 昭和46年 新潮社
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東京初空襲の昭和17年4月18日に太平洋上で米軍捕虜になった海軍兵士を主人公にした作品。戦時下を米軍の捕虜として生きなければならなかった人間から見た戦争を描く。 |
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総員起シ 昭和47年 文藝春秋
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沈没後9年を経て引揚げられた潜水艦イ33から、生けるが如きの遺体が発見された表題作ほか、証言取材を基に書き上げた衝撃の戦史小説全5篇。 |
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精神的季節(後改題『月夜の記憶』) 昭和47年 講談社
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「「杉田玄白 訳」の不思議」「心臓移植私見」「対談 切った人・切られた人」ほか、医学に関する随筆等を収録。 |
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海の史劇(前編・後編) 昭和47年 新潮社
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日露戦争の勝敗を決した明治38年(1905)の日本海海戦を描く。地方紙に連載した「海と人間」に加筆修正して、「海の史劇」と改題した。 |
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下弦の月 昭和48年 毎日新聞社
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大正末年、痴情のもつれから連続殺人事件を起した”鬼熊事件”に材を取った表題作ほか、吉村35歳から45歳の10年間に執筆した多彩な作品集。 |
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深海の使者 昭和48年 文藝春秋
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大戦中に日独間を秘密裏に往来していた潜水艦を題材にした作品。最多の192人の証言者に取材して描き出した。第34回文藝春秋読者賞受賞。 |
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海の鼠(後改題『魚影の群れ』) 昭和48年 新潮社
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大間の老練なマグロ漁師の姿を描く「魚影の群れ」ほか、鼠、蝸牛、鵜を題材に、人間と動物のかかわりを描いた4篇の短編集。 |
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関東大震災 昭和48年 文藝春秋
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大正12年、関東を襲い甚大な被害と社会的大混乱を巻き起こした大震災。綿密な調査と取材を重ねて執筆し、現代の世に警鐘を打ち鳴らす作品。 |
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一家の主 昭和49年 毎日新聞社
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生活と創作、喜び、悲しみ、ときに怒りなど家族、兄弟、縁者、友人等と過ごす日々のエピソードを、ユーモアで綴る自伝的長篇小説。 |
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冬の鷹 昭和49年 毎日新聞社
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前野良沢と杉田玄白を対比しながら「解体新書」の成立過程を描く歴史長篇。良沢の生き方に光を当てた。 |
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患者さん(後改題『お医者さん・患者さん』) 昭和49年 毎日新聞社
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自身の医療体験を通して医者と患者のさまざまな姿を綴った随筆集。 |
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螢 昭和49年 筑摩書房
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幼い弟を川で事故死させた少年の内心を見つめる表題作ほか、生活に潜む非現実感を著した全9編。 |
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磔 昭和50年 文藝春秋
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秀吉によって過酷に弾圧され、長崎で磔刑に処された26聖人殉教を描いた表題作ほか、歴史に材を得て、人に生を見すえた5つの中・短篇。 |
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北天の星(上・下) 昭和50年 講談社
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中川五郎治は、抑留されたロシアから生還後、北海道松前で日本初の西洋式種痘(牛痘法)を行った。五郎治の一生を追う歴史長篇。 |
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漂流 昭和51年 新潮社
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江戸時代、絶海の火山島に漂流し12年の後生還した、土佐の船乗り・長平の壮絶な生きざまを描く。 |
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海軍乙事件 昭和51年 文藝春秋
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表題作「海軍乙事件」は、ゲリラ部隊に捕まった参謀長福留繁中将の救出作戦と、紛失した機密図書の行方を描いた作品。収録作「海軍甲事件」は、連合艦隊司令長官山本五十六が戦死した事件を題材にした作品。 |
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亭主の家出 昭和52年 文藝春秋
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42歳働きざかりとはいえ、女房と子供には無視され、メシすら満足に食わせてもらえない中年男性を描いた小説。TVドラマ放映原作。 |
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羆嵐 昭和52年 新潮社
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大正4年、北海道開拓村で起こった羆による獣害事件、三毛別羆事件を元に大自然の過酷な現実を描いた作品。 |
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赤い人 昭和52年 筑摩書房
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北海道開拓という過酷な労役を課された囚人と、それを取り締まる看守の姿を描いた北海道開拓の物語。 |
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ふぉん・しいほるとの娘(上・下) 昭和53年 毎日新聞社
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楠本イネは、江戸後期に来日したドイツ人医師フォン・シーボルトの娘。女性産科医となったイネの生涯を描く歴史長篇。 |
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海の絵巻(後改題『鯨の絵巻』) 昭和53年 新潮社
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古式捕鯨最後の筆頭刃刺を務めた男の悲哀を描いた表題作ほか、動物を相手に生活を営む人間たちの哀歓を探る全5篇。 |
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メロンと鳩 昭和53年 講談社
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処刑を目前にした死刑囚と面接委員との心の交流を描いた表題ほか、”生と死”を見つめる吉村の多彩な小説世界全10編。 |
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帽子 昭和53年 集英社
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癌に冒され死期が迫った妻を優しく励ます夫の切ない心情を描いた表題作ほか、日常生活に潜む不意の出来事に材を取り描いた全9編。 |
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遠い日の戦争 昭和53年 新潮社
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終戦の詔勅が下った後、福岡西部軍司令部の将校らが米軍兵を斬首した。戦後、連合国軍の戦争犯罪容疑者に対する追及が急速に進み、元将校は逃走を図る。戦犯として断罪された人間から見た戦争を描く。 |
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白い遠景 昭和54年 講談社
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「「冬の鷹」ノート」(一)(二)、「「ふぉん・しいほると」ノート」(一)~(三)、「「北天の星」ノート」(一)~(四)など、医学小説の取材ノートを収録。 |
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月夜の魚 昭和54年 角川書店
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家族について、親類について、また身近にあった話を聞いて書き上げた、さまざまな死の光景を描いた短篇11篇。 |
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蟹の縦ばい 昭和54年 毎日新聞社
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健康診断のエピソードを綴った「胃カメラ」や、杉田玄白が義歯をはめていた事実と調査資料を記した「ハシカと義歯」ほか。 |
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熊撃ち 昭和54年 筑摩書房
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厳しい大自然の中で実際に起きた事件を題材に、猟師と羆の、生きるために繰り広げられる息づまる対決を描く7篇。 |
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ポーツマスの旗 昭和54年 新潮社
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日露戦争時、ポーツマス講和条約締結に首席全権として臨んだ外相・小村寿太郎の交渉手段と功績に新たな光をあてた作品。 |
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海も暮れきる 昭和55年 講談社
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自由律による類い稀な俳人・尾崎放哉。自分と同じ結核に蝕まれた放哉の、孤独と死への経過を描いた作品。 |
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冬の海ー私の北海道取材紀行 昭和55年 筑摩書房
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「中川五郎冶について―「北天の星」」を収録。 |
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虹の翼 昭和55年 文藝春秋
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ライト兄弟世界初飛行の12年前、1891年に独自の構想で航空機を考案した二宮忠八の空への夢と情熱の生涯を描く。 |
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炎のなかの休暇 昭和56年 新潮社
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戦時下の暮らしを描いた自伝的連作短篇小説集。収録作「蜻蛉」は、日中戦争から太平洋戦争へ向かう時代を背景に、近所に住む友人との交流やその死を描いた私小説。兄敬吾の出兵・戦死も描かれる。 |
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歴史の影絵 昭和56年 中央公論社
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「種痘伝来記」「洋方女医楠本イネと娘高子」ほか。 |
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実を申すと 昭和56年 文化出版局
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漂流民野村長平、シーボルトの娘イネの出生の秘密、沈没した潜水艦乗組員の最期など、歴史の〈実像〉を追う発見に満ちた歴史紀行。 |
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光る壁画 昭和56年 新潮社
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胃カメラは、世界に先駆けて戦後間もない日本で開発された。技術開発に邁進した医師や技師の姿を追求した長篇。 |
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戦史の証言者たち 昭和56年 毎日新聞社
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戦史小説を書くにあたって北は北海道から南は沖縄まで、多くの関係者に会い証言を集めた。ノートの他にテープレコーダーも併用していた。100本以上あったテープを文字起こしして、その一部を活字化した。 |
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破船 昭和57年 筑摩書房
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極貧の村での秘密の風習「お船様」が招く悪夢のような災厄。閉鎖的で貧しい漁村の悲劇を描いた創作小説の傑作。 |
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遅れた時計 昭和57年 毎日新聞社
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ひたむきに生きながらも少しずつ軌道から外れる人たちを描き、人生の小宇宙を創り出した全10編。 |
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脱出 昭和57年 新潮社
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戦時を背景にした短篇5作品を収録。 |
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間宮林蔵 昭和57年 講談社
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江戸時代、樺太の地を探検して間宮海峡を発見した謎多き探検家・間宮林蔵の波乱万丈の生涯を描いた歴史小説。 |
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月下美人 昭和58年 講談社
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軍用機を爆破した元逃亡兵を取材する「私」と、苦悩の歳月を生きてきた男との魂の交流を描く表題作など、生と死を見つめる全8篇。 |
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破獄 昭和58年 岩波書店
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戦中から戦後にかけて、網走刑務所などで4度の脱獄を重ねた実在の人物をモデルに描いた小説。芸術選奨文部大臣賞と読売文学賞を受賞。 |
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冷い夏、熱い夏 昭和59年 新潮社
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肋骨切除手術後の療養生活を支えてくれた弟。強い絆で結ばれた弟の肺ガン発病から死までを見つめた一年あまりの日々を、感傷を排した筆致で書き下ろした。 |
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長英逃亡(上・下) 昭和59年 毎日新聞社
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脱獄した蘭学者高野長英の6年に及ぶ逃亡劇を描いた作品。長英は逃亡中の約1年間、宇和島藩に保護され蘭書の翻訳に努めた。 |
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秋の街 昭和59年 文藝春秋
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16年ぶりに刑務所の外に出た無期刑の囚人を描いた表題作ほか、異った生活背景をもつ人間を主人公にした全7作品。 |
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東京の下町 昭和60年 文藝春秋
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吉村が幼年期を過ごした戦前・日暮里での、庶民の生活を生き生きと描き、生活史の貴重な記録ともなったエッセイ集。 |
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花渡る海 昭和60年 中央公論社
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川尻村(現広島県呉市川尻町)に生まれた水主・久蔵は、漂着したロシアで西洋式種痘法を学んだ。日本に初めてその技術を持ち帰った久蔵の人生を描いた歴史長篇。 |
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海の祭礼 昭和61年 文藝春秋
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オランダ通詞森山栄之助に、初めて本格的な英会話を教えたアメリカ人ラナルド・マクドナルドを題材にした作品。 |
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蜜蜂乱舞 昭和62年 新潮文庫
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花を追い日本列島を北上する、養蜂業を生業として旅をする一家を描き、映画化された作品。 |
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闇を裂く道(上・下) 昭和62年 文藝春秋
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着工から完成まで16年を要し、世紀の難工事といわれた静岡県・丹那トンネルの土と人との壮絶な闘いを描く。 |
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仮釈放 昭和63年 新潮社
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浮気した妻を刺殺し、相手の男の母親を焼殺し無期刑に処せられた男。16年後に仮釈放された男の生き様を問うた書下ろし作品。 |
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帰艦セズ 昭和63年 文藝春秋
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昭和19年、巡洋艦の機関兵の死について、後に驚くべき事実が判明した表題作ほか、過去の犯罪や人間の死を扱った全7篇。 |
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海馬 平成元年 新潮社
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知床半島の町でトド撃ちに執念を燃やす老人と娘の確執を描く表題作ほか、鰻、闘牛、蛍、鴨、羆、錦鯉、を題材に人々を描く全7篇。 |
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旅行鞄のなか 平成元年 毎日新聞社
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楠本イネの母其扇(ソノオオギ)タキの名前の読みに対する読者の指摘と調査内容を記す「読者からの手紙」。自身の肺結核闘病を支えた弟の死を記す「義妹との旅」、ほか。 |
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死のある風景 平成元年 文藝春秋
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戦争や病による肉親や友人の死などさまざまな「死」を、生きる形が多様であるように、死もそれぞれに違うことを無意識に感じて書いたのだろうと、あとがきに記す。私小説全10篇。 |
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桜田門外ノ変 平成2年 新潮社
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緊迫した幕末、時の大老・井伊直弼を桜田門外において暗殺した事件を、水戸藩士関鉄之助の視点を通じて描く歴史大作。 |
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幕府軍艦「回天」始末 平成2年 文藝春秋
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箱館に立てこもった旧幕府軍が、起死回生を期し軍艦「回天」をもって新政府軍を奇襲した、宮古湾海戦を描く歴史長篇。 |
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史実を追う旅 平成3年 文春文庫
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歴史の裏面に埋もれた事実を、掘り起こして小説を執筆してきた吉村が、小説に書けなかったさまざまな秘話を披露する随想集。 |
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白い航跡(上・下) 平成3年 講談社
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高木兼寛は、海軍軍医として脚気の予防法を確立した。後に東京慈恵会医科大学創設者となった兼寛の姿を描く歴史長篇。 |
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黒船 平成3年 中央公論社
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ペリー初来航時にオランダ語で通詞を務めた堀達之助を主人公に、開国へ向かう日本人の姿を描く。 |
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平家物語(上・下)少年少女古典文学館 第11・12巻(後改題『吉村昭の平家物語』) 平成4年 講談社
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歴史文学、記録文学を手がける著者が、中世の平家の興亡をダイナミックに、簡潔で行き届いた達意の文章で訳した吉村版『平家物語』。 |
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私の文学漂流 平成4年 新潮社
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結核闘病、大学文芸部時代、生活苦。同士である妻と逆境を乗り越え、太宰治賞を受賞するまでの軌跡を率直に綴った半生の記。 |
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私の引出し 平成5年 文藝春秋
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「江戸時代の伝染病」「偶然からおこなわれた心臓手術」「心臓移植と日本人」「胃カメラと私」「日暮里のお医者さん」ほか。 |
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法師蝉 平成5年 新潮社
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平穏な日々に忍び込む微かな死のイメージを捕えた表題作ほか、人生の秋を迎えた男たちの心象を描いた短篇全9編。 |
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ニコライ遭難 平成5年 岩波書店
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明治24年(1891)に起きた大津事件を題材にした作品。当時の日露関係やロシア帝国皇太子ニコライを襲った津田三蔵の死の真相を描く。 |
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昭和歳時記 平成5年 文藝春秋
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戦前から終戦直後まで下町で見聞き、体験した事柄について味わい深い文章でつづった読み物。 |
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天狗争乱 平成6年 朝日新聞社
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元治元年(1864)に起きた天狗党の乱を題材に、世の中に取り残されていく尊王攘夷派を描いた作品。 |
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再婚 平成7年 角川書店
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男の複雑な気持ちを描いた表題作ほか、定年退職した男の家出と死、会社が崩壊していくいく中での男たちの姿を描く全8篇。 |
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プリズンの満月 平成7年 新潮社
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戦争犯罪人を収容する巣鴨プリズンを舞台に、日本人刑務官が警備の米軍兵と収容されている戦犯との間で板挟みになり、葛藤する模様を描いた作品。 |
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彦九郎山河 平成7年 文藝春秋
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幕末に狂信的な尊王攘夷論者として「寛政の貴人」と称された高山彦九郎の、孤高の人の心情に迫った歴史小説。 |
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落日の宴 勘定奉行川路聖謨 平成8年 講談社
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安政元年(1854)の日露和親条約締結にあたり、全権としてロシアのプチャーチンとの厳しい交渉に臨んだ幕臣の姿を描く。幕末における幕府の組織力や幕臣の実像に迫った作品。 |
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街のはなし 平成8年 文藝春秋
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温かく、時に厳しく人間を見つめる作家の眼差しが、ユーモアを交え日常をとらえたエッセイ全79篇。 |
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朱の丸御用船 平成9年 文藝春秋
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江戸末期、難破した御用船から年貢米を奪う村ぐるみの犯罪。災厄が襲い追い詰められていく村人たちの心理に迫る歴史小説。 |
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遠い幻影 平成10年 文藝春秋
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戦死した兄の思い出から、過去からのメッセージをたどる表題作ほか、人生の滋味深い出来事を描く12の短篇集。 |
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わたしの流儀 平成10年 新潮社
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「光る壁画」を取り上げ、胃カメラの開発について述べた「ノーベル賞」、自身の肺結核闘病を記し、生きていることのありがたさを語る「病は気から」ほか。 |
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生麦事件 平成10年 新潮社
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横浜郊外の生麦村で起こった薩摩藩士によるイギリス人殺傷事件。幕末の前代未聞の事件を軸に、明治維新に至る激動の6年を圧倒的な筆致で描く。 |
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史実を歩く 平成10年 文春新書
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『戦艦武蔵』『桜田門外ノ変』など戦史・歴史小説を精力的に発表した吉村が、綿密な取材から史実へ向かう姿勢を率直に綴った取材ノート。 |
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碇星 平成11年 中央公論社
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かつての上司から特別な頼みごとがきた表題作ほか、人生を静かに見つめ、生と死を慈しみをこめて描く作品集。 |
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わが心の小説家たち 平成11年 平凡社新書
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森鴎外、志賀直哉、川端康成。。読書好きの少年期、文章の修業時代を通して吉村が敬愛した作家たちの、作品の魅力を語る作家論。 |
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天に遊ぶ 平成11年 新潮社
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男女の不可思議さ、夫婦や家族の絆、作者の小説取材に材を取った作品など、「天に遊ぶ」思いで、原稿用紙10枚に人間の姿を描いた短篇21篇。 |
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アメリカ彦蔵 平成11年 読売新聞社
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幕末期、破船漂流の末渡米、米国に帰化した後9年ぶりに故国に帰還して日米外交の先駆となった船乗りの成長と数奇な運命を描く。 |
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夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲 平成12年 文藝春秋
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高松凌雲は、パリで医学の精神を学んだ後、旧幕臣として函館戦争に参加。戦場で敵味方の区別なく治療した。凌雲の生涯を記した歴史長篇。 |
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島抜け 平成12年 新潮社
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短篇「梅の刺青」は、明治2年に日本で最初の献体をした遊女をはじめ、初期解剖の歴史を主題とした作品。ほか「島抜け」「欠けた椀」を収録。 |
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私の好きな悪い癖 平成12年 講談社
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「「日本医家伝」と岩本さん」、自身の肺結核闘病にふれた「私の中学時代」、「誤診と私」ほか。 |
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敵討 平成13年 新潮社
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美徳とされてきた仇討は、明治期に一転し殺人罪を課せられた。歴史の流れに翻弄された敵討の人間模様を描いた作品。 |
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東京の戦争 平成13年 筑摩書房
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吉村自身の空襲体験や戦時下の暮らしを綴った回想記。首都東京で戦時を過ごした限られた人間として「庶民生活を書き残すのも、一つの意味があるのではないか」という思いで執筆した。 |
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見えない橋 平成14年 文藝春秋
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北の町で、漁師の村で、都会の片隅で、過去を背負い暮らす者とそれを見守る者。人びとの情景を静謐な筆致で描く7篇。 |
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縁起のいい客 平成15年 文藝春秋
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「夜明けの雷鳴 医師 高松凌雲」の主人公・高松凌雲の孫との出会いを記す「幕末」や、「両親のこと、私の病気」など、自身の肺結核闘病と両親への思いを綴った随筆ほか。 |
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大黒屋光太夫(上・下) 平成15年 毎日新聞社
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天明2年(1782)に難破した神昌丸を題材に、船員たちの過酷な漂流とシベリアでの生活、そして鎖国日本への帰還を克明に描く。漂流を題材にした最後の作品。 |
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漂流記の魅力 平成15年 新潮新書
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難破遭難、ロシアでの辛苦の生活、日本人初の世界一周。苛烈なドラマ「若宮丸」の漂流記から、日本独自の海洋文学の魅力を説く随筆。 |
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事物はじまりの物語 平成17年 筑摩書房(ちくまプリマー新書)
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「解剖」「胃カメラ」ほか。 |
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暁の旅人 平成17年 講談社
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松本良順は、長崎でオランダ人医師ポンペに医学を学んだ。幕末維新の動乱期に、医師として自らの信じる道を貫いた良順の姿を描く歴史長篇。 |
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彰義隊 平成17年 朝日新聞社
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慶応4年(1868)に起きた上野戦争を、彰義隊に擁立された輪王寺宮を主人公に描いた作品。吉村は、幼少期に、町に残る伝承を断片的に聞いていたという。 |
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わたしの普段着 平成17年 新潮社
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短篇「梅の刺青」にふれた「雲井龍雄と解剖のこと」、「歴史に埋もれた種痘術」「予防接種」「私の仰臥漫録」ほか。 |
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死顔 平成18年 新潮社
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死の直前まで推敲を繰り返した遺作。吉村の死生観が凝縮して表現されている。次兄の死を主軸に、肉親の死や自らの結核闘病、戦中戦後の生活など実体験を反映し、延命措置に対する違和感についても綴った。 |
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回り灯籠 平成18年 筑摩書房
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バージャー病を患った自身の体験と凍傷に侵された漂流民について記す「漂流民の足」、「神々の沈黙」調査過程にふれた「コーガ」ほか。 |
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ひとり旅 平成19年 文藝春秋
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肋骨を切除した自身の手術体験とゴルフを勧めた丹羽文雄との思い出を綴る「ゴルフと肋骨」、『神々の沈黙』調査の旅にふれながら長崎の魅力を語った「私と長崎」ほか。 |
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炎天 平成21年 筑摩書房
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幻の私家版句集に、その後の句とエッセイを増補し、吉村死去後まとめられた唯一の句集。 |
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七十五度目の長崎行き 平成21年 河出書房新社
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日暮里、浅草、長崎、田野畑、北海道。。数々の作品の舞台となった、全国津々浦々の土地をめぐる紀行文。 |
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真昼の花火 平成22年 河出書房新社
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一族の家業である繊維業界に材を取り、スリリングな人間ドラマ・産業ドラマを描いた表題作ほか、自伝的要素の濃い未刊行作品全4編。 |
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わたしの取材余話 平成22年 河出書房新社
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「「心臓移植」と狂気」「「心臓移植」取材ノートから」「中川五郎治について『北海道取材ノート』から」ほか。 |
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白い道 平成22年 岩波書店
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「「しいほるとの娘」が生きた時代」、前野良沢を語る「孤然とした生き方」、高木兼寛についての資料調査を記した「小説家としての興味」、「『暁の旅人』創作ノート」ほか。 |
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味を訪ねて(後改題『味を追う旅』) 平成22年 河出書房新社
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何気ない下町の味、取材先で出合った地元の味など、しばしの憩いに酒と食べものを求めて綴ったエッセイ集。 |
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その人の想い出 平成23年 河出書房新社
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出会い、邂逅、遭遇、巡り会い、再会、一期一会。。さまざま人との出会いと記憶の思い出を綴ったエッセイ集。 |
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履歴書代わりに 平成23年 河出書房新社
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肋骨切除の手術を受けるきっかけとなった雑誌「保健同人」について記す「『保健同人』と私」、鼓膜再建手術の体験を綴った「春の入院」、自身の肺結核闘病を軸に、家族・兄弟のことを綴った「私の青春」ほか。 |