概要

 本年は大正12年(1923)9月1日の関東大震災発生から100年、吉村昭の『関東大震災』(昭和48年 文藝春秋)刊行から50年になります。
 現在の荒川区東日暮里に生まれた吉村は、幼い頃から、この地で関東大震災を経験した両親の話を聞いて育ちました。毎年9月1日は、大震災の記憶を新たにするため、家族そろって食卓を囲み、両親の体験談に耳を傾けました。
 生まれ育った東京で起きた大震災を、自ら確かめたいと考えていた吉村は、昭和47年(1972)、45歳で「関東大震災」の連載を始めます。生存者への取材と証言収集を行い、膨大な文献資料の調査を重ね、大震災の実態を克明に描き出しました。
 本展では、吉村が証言を書き留めた取材ノートや、執筆時の参考文献と共に、関東大震災発生時の被害状況を伝える映像や写真、絵葉書、石版画※などを紹介します。
 また、吉村が「関東大震災」の執筆で見識を深めた防災の知見を語る随筆や講演録のほか、『三陸海岸大津波』(平成16年 文春文庫)で取り上げた宮古市田老の防潮堤と、東日本大震災後の取り組み「学ぶ防災」(宮古市)について紹介します。
 災禍の教訓を伝える資料にふれる中で、失われた多くの尊い命に思いを馳せ、困難を乗り越えてきた人びとの姿を見つめると共に、過去の災害を語り継ぐことの大切さや、災害の備えについて考える機会としていただければ幸いです。
※石版画の展示は9月29日(金曜)まで

主な展示資料

*津村節子氏寄託資料
・吉村昭自筆取材ノート「関東大震災メモ」*
・吉村昭自筆メモ「関東大震と乗物」*
・吉村昭自筆メモ「関東大震災」*
・吉村昭「上野と関東大震災」(「うえの」昭和62年(1987)9月号 上野のれん会)(当館蔵)※「うえの」展示は8月16日(水)まで
・東京震災記念事業協会清算事務所編『被服廠跡』昭和7年(1932) 東京震災記念事業協会清算事務所(東京都立中央図書館蔵)※『被服廠跡』展示は9月20日(水)まで

・永田力画「瓢箪池より見る十二階(凌雲閣)」吉村昭『東京の下町』より(当館蔵)
・写真「宮城前広場の避難民」大正12年(1923)(写真提供 東京都復興記念館)
・絵葉書「大正12.9.1東京大震災 日暮里停車場へ殺到したる避難民」(複製)大正12年(1923)以降(写真提供 荒川ふるさと文化館)
・絵葉書「避難民日暮里駅ニ殺到シ我レ先ニ乗車ス」(複製)大正12年(1923)以降(写真提供 荒川ふるさと文化館)
・絵葉書「東京日暮里駅の避難民」(複製)大正12年(1923)以降(写真提供 荒川ふるさと文化館)
・絵葉書「大正12.9.1東京大震災実況 群集せる日暮里の避難民」(複製)大正12年(1923)以降(写真提供 荒川ふるさと文化館)
・絵葉書「十二階」大正12年(1923)(複製)(写真提供 東京都立中央図書館)
・写真「大正大震災惨状実況 九月四日本所方面の焼跡」大正12年(1923)(写真提供 東京都立中央図書館)
・写真「大正大震災惨状実況 九月四日大手町附近に活動しつつある看護の一團」大正12年(1923)(写真提供 東京都立中央図書館)など
【映像 常時上映】「帝都の大震災 大正十二年九月一日 」(映像提供  国立映画アーカイブ) 
【本所被服廠跡の生存者・山岡清眞の手記】
・山岡清眞「大正十二年九月一日 関東大震災本所被服廠跡 被災生存者記録」昭和47年(1972)(当館蔵)
・山岡清眞「関東大震災 嗚呼被服廠跡」昭和49年(1974)1月(当館蔵)
山岡清眞「関東大震災 嗚呼被服廠跡」昭和49年(1974)1月(当館蔵)
山岡清眞「大正十二年九月一日被災 嗚呼 噫 被服廠跡」昭和49年(1974)1月26日(当館蔵)
【東京消防庁消防博物館所蔵資料】【協力  荒川消防署】

映像【常時上映】関東大震災記録映像(映像提供 東京消防庁消防博物館)
・浦野銀次郎「帝都大震災画報 浅草公園花屋敷及十二階之真景」大正12年(1923)10月15日 浦島堂画局(東京消防庁消防博物館蔵)※
・浦野銀次郎「帝都大震災画報 新吉原遊廓仲之町猛火大旋風之真景」大正13年(1924)5月2日浦島堂画局(東京消防庁消防博物館蔵)※
・浦野銀次郎「帝都大震災画報 激震に襲われし神田万世駅惨状之真景」大正12年(1923)10月15日浦島堂画局(東京消防庁消防博物館蔵)※
・土屋傳 宇田川安高「帝都大震災画報 上野公園桜雲台に於て殿下災害地御視察之図」大正12年(1923)9月27日 天正堂 集画堂(東京消防庁消防博物館蔵)※
※以上「帝都大震災画報」の展示は9月29日(金)まで
【吉村昭『三陸海岸大津波』(平成16年 文春文庫)関連資料】
・吉村昭の津波に関する自筆取材ノート*
・第12回三陸地域づくり講座基調講演「三陸大津波―災害と日本人―」(『SANRIKU ALL Right』)平成13年(2001)3月 三陸国道工事事務所*
・吉村昭「歴史はくり返す」(「3.11から一年 100人の作家の言葉」「文藝春秋」平成24年(2012)3月臨時増刊号)(当館蔵)
・写真 宮古市田老第一防潮堤
・写真 津波遺構たろう観光ホテル
・写真 大海嘯訓令碑(昭和8年三陸津波の記念碑 宮古市田老) など

会期

令和5年6月16日(金曜)から令和5年10月18日(水曜)まで ※一部展示替えあり

【休館日】7月20日(木曜)、8月17日(木曜)、9月1日(金曜)、9月21日(木曜)、10月2日(月曜)~10月6日(金曜)
 ※9月30日(土曜)、10月1日(日曜)、10月7日(土曜)、10月8日(日曜)は資料整理作業のため、トピック展会場はご覧になれません。

開館時間

9時から20時30分

会場

吉村昭記念文学館2階エントランス 著作閲覧コーナー

入館料

無料