このたび吉村昭記念文学館では、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、令和2年度企画展「戦後75年 戦史の証言者たち―吉村昭が記録した戦争体験者の声―」をウェブサイトで開催する運びとなりました。この展覧会では、戦争と人間を見つめ続けてきた小説家、吉村昭の戦史小説を紹介します。
18歳で終戦を迎えた吉村は、敗戦を機に一変した日本人の態度や意識に違和感を持ち続けていました。自分が見た戦争は何だったのか。戦争を通して人間の本質を探ろうと、昭和41年に「戦艦武蔵」を発表します。その後数年にわたり、多くの戦史小説を執筆しました。生存者への取材をもとに戦史の隠れた部分を描き出し、昭和48年には「戦艦武蔵」など一連のドキュメント作品で菊池寛賞を受賞しました。
戦後75年を迎え、戦争の記憶をどのように受け継いでいくか模索が続く今、戦争体験者の肉声を記した吉村作品を通して、戦争の一実態を知る機会となれば幸いです。
小説家 吉村昭Akira Yoshimura
昭和2年(1927)~平成18年(2006)
東京府北豊島郡日暮里町大字谷中本(現荒川区東日暮里六丁目)生まれ。空襲で家が焼失するまでの18年間を荒川区で過ごす。学習院大学在学中に執筆活動を開始。昭和41年に「星への旅」で太宰治賞受賞。同年、「戦艦武蔵」を発表しベストセラーとなる。「死とはなにか、生とはなにか」を主題に、人間の本質を探究し、数多くの短篇と長篇を執筆した。
【受賞歴】
太宰治賞、文藝春秋読者賞、菊池寛賞、吉川英治文学賞、毎日芸術賞、読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞、大佛次郎賞、海洋文学大賞特別賞、高野長英賞、日本芸術院賞、東京都都民文化栄誉章、荒川区区民栄誉賞、従四位旭日中綬章
謝辞
本展覧会の開催に際し、格別なご協力を賜りました関係者各位ならびに関係機関に深く感謝申し上げます。
※現代の人権や差別をめぐる諸問題に照らし、なじまない用語、表現も一部含まれますが、自立的な文芸作品である点、及び歴史的な資料である点を考慮し、原典のままとしました。
※掲載した資料の著作権については極力調査を行いましたが、お気づきの点がございましたら当館までご連絡ください。